「何をお探し?」
私が探しているのは・・・
と、つい本音を漏らしてしまうような雰囲気を図書室司書・小町さゆりさんはもっています。
「お探し物は図書室まで」は、悩みを抱えた5人の主人公たちが、小町さんのいる図書室を訪れたことをきっかけに、人生を好転させるヒントを見つけていくお話です。
・生き方のヒントがほしい。
・ちょっと一息つきたい。
・心あたたまる話が読みたい。
1.お探し物は図書館まで・作品内容
○2021年本屋大賞2位
○作者は、青山美智子さん。
ほかの著書に「木曜日にはココアを」「鎌倉うずまき案内所」などがあります。
○2020年にポプラ社より単行本が発行されました。
○5つの短編集で、主人公はそれぞれ自分の生き方や将来について思い悩んでいます。
1-1.人生に不安を抱えた5人の主人公
○仕事にやりがいを感じられず、このままでいいのか迷っている婦人服販売員の朋香
○夢はあるが動けないでいる家具メーカー経理の諒
○子どもが生まれてから、自分の働き方に悩んでいる元雑誌編集者の夏美
○就職につまずいてしまい、この先どうすればいいのか分からないニートの浩弥
○退職後の生き方に戸惑う、定年退職した正雄
1-2.キーパーソンの小町さん
主人公たち5人に変わるきっかけを与えてくれたのが司書の小町さん。
誰もがびっくりするくらい、大きな体をしていて、5人からさまざまに例えられています。
例えば、ベイマックス、巨大な鏡餅など。
正直愛想はよくないですが、「愛想が悪い=悪い人」ではないことが、小町さんを見ると分かります。
小町さんは静かに話を聞いて、主人公たちを肯定し、さらっとした一言で心のマイナスをプラスに変えてくれる人です。
1-3.小町さんセレクトの本と羊毛フェルト
小町さんは、本について聞かれると、ものすごいスピードでパソコンのキーボードをうち、本のリストを出します。
その中には、尋ねた本と関係のない小町さんセレクトの本が1冊。
さらに、その人に合った羊毛フェルト作品を、1個つけてくれるのです。小町さん曰く本の付録。
この羊毛フェルトは、小町さんがカウンターの中でザクザク作っているもの。
羊毛フェルト作品ってどんなもの?というと、「お探し物は図書室まで」の本の表紙にあるカニや地球などが、羊毛フェルトの作品です。
この小町さんセレクトの本と羊毛フェルトが、主人公たちが「気づき」を得るきっかけになります。
2.お探し物は図書室まで・感想
主人公たちは、図書室を訪れたことをきっかけに人生を好転させていますが、小町さんからおすすめされた本に直接悩みの答えが書いてあるわけでないし、まして付録の羊毛フェルトに特別なパワーがあるわけでもありません。
何かきっかけがあったとき、そこから気づきを得られるか、気づきを行動に移せるかは自分次第だということを実感しました。
気づくというのは難しいですが、プライドや嫉妬、思い込みが、気づきのチャンスをどれほど邪魔しているか。偏った見方をしないように気をつけたいところです。
主人公たちは、本だけでなく、周りの人からも気づきを得たり、反省したりしています。その素直さが素敵だと思いました。
そもそも、本をおすすめされたからといっても、それを読もうとしなければ、主人公たちのこれからは何も変わらなかったでしょう。
主人公たちは羊毛フェルトをもらったことや、本を読んだことをきっかけに、自ら新しい行動をしています。
気づけること、行動することの大切さをこの本は教えてくれます。
3.印象に残ったセリフ
卵で何が作れるかわかってないと、思いつかない
一章の主人公、朋香が小町さんからおすすめしてもらった本は「ぐりとぐら」。
朋香が友達に、ぐりとぐらが森で見つけた卵でカステラを作る話をしますが、その友達から言われたのが、「卵で何が作れるかわかってないと、思いつかない」
たまたま見つけた卵。卵で何が作れるか分かってないとカステラが作れないように、いくらチャンスあっても、それを使う考えがなければ何もできません。
日頃から準備をしていること、備えることの大切さを実感します。
これ、羊毛フェルトっていうんですけどね。どんな形にも、どんな大きさにもなるんですよ。いかようにも無限で、ここまで、というのはないの
小町さんが正雄に羊毛フェルトのことを説明するときのセリフです。
悩んでいるときは、自分の視野を狭めてしまいがちですが「どんな形にも、どんな大きさにもなる」という言葉で、自分の限界をつくる凝り固まった考えから解放されるような気がしました。
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