宮下奈都「羊と鋼の森」感想‐才能なんてなくても「ただ、やるだけ」

ピアノ調律師の世界が描かれた宮下奈都さんの「羊と鋼の森」

まさに森のような穏やかな時間が流れる小説です。

こんな方におすすめ
・夢にむかっている最中。
・前を向きたい。
・ピアノが好き。
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1.「羊と鋼の森」作品紹介


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作者は宮下奈都さん。

「羊と鋼の森」は、文藝春秋より2015年に単行本が発売され、2018年文庫化。
2018年には映画が公開されました。

2016年本屋大賞の大賞作品です。

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2.「羊と鋼の森」あらすじ

外村は、高2のときはじめてピアノの調律を目にし、その音に魅了されました。

調律師の養成学校を卒業した外村は、江藤楽器にピアノ調律師として就職。
そこには高校生の外村に、調律師になるきっかけを与えた板取さんもいました。

調律師になるための努力の仕方に悩む外村。
先輩調律師やお客さんとの関わりから、外村は、自分が調律師として目指す方向を見つけていきます。

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3.「羊と鋼の森」登場人物

【江藤楽器の調律師】
〇外村
高校のときに出会った板取さんの調律に憧れて調律の道に。
どうすれば調律の腕が上達するのか分からず悩む。

〇柳
外村の指導にあたる7年先輩の調律師。
外村の頑張りをよく見ていて、困ったときには優しくアドバイスする。

〇秋野
ちょっと厳しいことも言ってくる40代前半の調律師。
昔はピアニストを目指していた。

〇板取
誰もが認める調律の腕をもつ。
穏やかで優しく外村のことを見守る。

【外村に影響を与える双子の姉妹】
和音かずね
双子の姉。生まじめで大人しい。

由仁ゆに
双子の妹。活発で姉のかわりに要望を伝える。

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4.「羊と鋼の森」感想(ネタバレを含む)

ピアノ調律師の仕事が描かれた「羊と鋼の森」

本を読んで、ハッキリとした正解がない調律の難しさを知りました。

繊細な調律

ただ音階を整えるだけでなく、音の響きをお客さんのイメージに調整する作業が大変そうで、まさに主人公の外村も苦労しています。

お客さんのイメージに合わせるためには、音という形のないものを、言葉を使って共有する必要があります。

言葉で共有するといっても、「やわらかい」も「かたい」もイメージは人それぞれ。

なんとかイメージを共有できたとしても、実際にイメージ通りの音にするには繊細な作業が必要になり、さまざまなスキルがいる大変な仕事だと驚嘆しました。

ピアノそれぞれに個性があり、ピアノが置かれた部屋によっても調律が変わるとなると、一人前になるまで気の遠くなる思いがします。

「焦ってはいけません。こつこつ、こつこつです」

尊敬する板鳥さんに、こうアドバイスされた外村はひたむきに努力を積み重ねます。

けれど、もし才能や素質がなかったら?と不安がありました。

才能や素質にとらわれない

ある日、外村と柳さんは、頑張りたい気持ちはあるけど何を頑張ればいいか分からないという話をします。

私もそのように考えることがよくあり共感しました。

何とか今の状況を変えたいけれど、具体的に何をやればいいか分からない。
何をすればいいかさえ分かればいいのに、と。

なんて言いつつ、ぐうたらな私は動けなさそうな気がします。

その点、外村や柳さんならちゃんと努力しそうです。

 
調律に必要なものは何か?

意を決して質問した外村は、秋山さんや柳さんの答えが「才能」や「素質」でなかったことに安心しますが、話の流れで秋山さんは、時間をかけてもできないやつはできない、とも言います。

しかしそれは、才能がないとやっても意味ない、ということではありませんでした。

「口にしないだけで、みんなわかってるよ。だけどさ、才能とか、素質とか、考えないよな。考えたってしかたがないんだから」

「ただ、やるだけ」

秋山さんの言葉に、外村は決意を新たにします。

 
シンプルな言葉ですが「ただ、やるだけ」という言葉が心にズシンと来ました。

努力ではどうにもならないことがあると、歩きつづけるのがイヤになってしまいます。

けれど、才能がないことを考え続けて立ち止まっていても、何にもなりません。

先が見えない状態でやり続けることは不安で心が折れそうですが、「ただ、やるだけ」は短くて唱えやすい。
背中を押してくれる言葉と出会えました。

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