ちょっと視点を変えること、自分が今持っているものを知ることが、生きる力になる。
「鎌倉うずまき案内所」は、そんなことに気づかせてくれる本です。
・自分を見つめ直したい。
・二度読んで楽しめる本が読みたい。
・平成を懐かしみたい。
1.鎌倉うずまき案内所・作品内容
作者は青山美智子さん。
「鎌倉うずまき案内所」は、宝島社より2019年に単行本が発行され、2021年に文庫化されています。
青山美智子さんの著書はほかに「お探し物は図書室まで」「木曜日にはココアを」など。
1-1.「鎌倉うずまき案内所」とは?
その案内所への入り口は、迷い込んだ鎌倉の道に、突如現れます。
案内所にいるのは、「内巻」「外巻」と名乗る2人のおじいさんとアンモナイトの所長。
「はぐれましたか?」
そう聞かれた者たちはみな、日々の生活で何かからはぐれていて、悩みを抱えていました。
「ナイスうずまき!」
悩みを打ち明けると、返ってくるのがこの言葉。
「鎌倉うずまき案内所」の案内がはじまります。
・所長からの助言
・お助けアイテムを教えてもらう。
・困ったときのうずまきキャンディ(1人1個まで)
1-2.本の構成
平成が令和になるところからはじまり、昭和が平成になるところまで、時代を6人の主人公の物語でさかのぼる短編集です。
【それぞれの章の主人公】
・仕事の目標を失い、上司とも合わず転職を考えている早坂。
・息子の気持ちが分からない母。
・プロポーズを受けていいのか悩む梢。
・学校でひとりになることをおそれ、人と合わせてしまう中学生いちか。
・自身が脚本を書き率いてる劇団が、日の目を見ないまま40歳になった鮎川。
・世の中からひとり離れたような気持ちになってしまう文太。
消費税や家電、音楽など、「あったあった」と懐かしめる平成アイテムがちょくちょく登場します。
あとから登場人物のしぐさや言葉に意味があったことに気がつくところがあり、2度読んで楽しめる物語です。
2.鎌倉うずまき案内所・感想
悩みを抱えた者たちは、鎌倉うずまき案内所に行ったことをきっかけに、失っていた信念や自分が大切にしていたものなど、見えていなかったものに気がつきます。
生きていると、いつのまにか自分の軸や大切なものを見失っていることってあると思います。
それに気がつくのは、何かを無くしたあとの場合もあるから、自分が誤った方向に行っていることに気がつかないって怖い。
この本に出てくる主人公たちは、無くす前に誤りに気がつき自分で考え、軌道修正させています。
なぜ、気がつけたかといえば、周りの言葉を聞き、自分の心で受け取り、答えを導き出したから。
人の言葉を受け入れるって難しくもありますが、避けてばかりではいられないことだと思いました。
進む方向が分かった彼ら彼女らはみな、そこへ向って進んでいきます。
登場人物たちの中で、手を差し伸べたり、差し伸べられたりがあったんだろうと想像できるところは心あたたかく、前向きな気持ちになれた一冊でした。
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