今回は、三浦しをんさん作「舟を編む」の内容と魅力、感想を紹介します。
出版社の辞書編集部が舞台の「舟を編む」
辞書に情熱をそそぐ編集部員たちの奮闘と成長が描かれています。
・言葉を扱う仕事に興味がある。
・何かに打ち込みたい。
・ものづくりが好き。
1.「舟を編む」について
作者は三浦しをんさん。
2012年の本屋大賞の大賞作品です。文庫版もあります。
三浦しをんさんの著書はほかに、「まほろ駅前多田便利軒」「風が強く吹いている」など。
「舟を編む」「まほろ駅前多田便利軒」「風が強く吹いている」は、みな映画化されています。
2.「舟を編む」簡単なあらすじ紹介
玄武書房から新しく発売される辞書「大渡海」には、辞書は言葉の海を渡る舟のようなものという意味が込められています。
荒木公平は退職を控えていたため、自分の跡を継ぐものとして馬締(まじめ)光也を営業部から引っ張ってきました。
長い時間や手間がかかる辞書作り。
一冊の辞書をつくりあげる(舟を編む)までの物語が描かれています。
3.「舟を編む」登場人物
「舟を編む」は、全5章あり、章ごとに語り手が変わります。
一、荒木公平
子どもの頃から言葉に強い興味をもち、中学の入学祝いで辞書を貰ったことをきっかけに辞書に夢中になる。
玄武書房に入社し、辞書の監修役をつとめる松本先生と長年辞書をつくてきた。
もうすぐ定年をむかえるため後継者を探す。
二、馬締(まじめ)光也
辞書づくりのセンスを買われ営業部から引き抜かれてくる。
名字の読みのように真面目な性格。
トンチンカンな受け答えで、周りと馴染めないところがあった。
大学時代から住む下宿の早雲荘で大家のタケおばあさん、猫のトラさんと暮らす。
タケおばあさんが心配で早雲荘にやってきた孫の林香具矢のことが気になる。
愛想が足りないが仕事ができる契約社員の佐々木さんの計らいで、香具矢が板前をしている料理屋に行く。
三、西岡正志
馬締と同い年。馬締は大学院卒のため、西岡は先輩になる。
一見チャラチャラして軽い印象だが、人当たりがよく、気配りができる。
職場の雰囲気づくりにも気をつかい、面倒見がいい。
四、岸辺みどり
雑誌編集部から辞書編集部に異動になってきた。
はじめは馬締の使う言葉や服装などから、辞書編集部に不満をもつ。
自分とは遠い存在と思っていた馬締が、最初は自分と同じように悩んでいたこと、馬締の辞書づくりへの熱い思いを知り、前向きに仕事に取り組むようになる。
五、馬締光也
4.「舟を編む」の読書感想(ネタバレも含む)
今は知らない言葉があっても、スマホで検索すればすぐに出てくる時代になりました。
紙の辞書を使うことなんて、もうないかもしれないと思っていましたが、「舟を編む」を読んで、辞書が欲しくなりました。
辞書作りの過程が新鮮
辞書は、普通の書籍よりも手間がかかりそうなことは分かりますが、ここまで気が遠くなるような作業をしていたとは思いませんでした。
単語の解説は、ありとあらゆる角度から、その解説が適しているかを検証しなければなりません。
辞書を読む人すべてに合った解説を考えることは大変です。
数年たてば人々の価値観も変わっていくことを考えると、世の中の流れをよく知る必要があり、解説文を考える作業だけでも時間を費やしてしまいます。
完成までに何度も何度もチェックして直してを繰り返し、1冊の辞書を完成させる。
そのチェックにしても、文章の間違いや、単語の抜け、説明イラストの確認などさまざまあります。
辞書に使う紙や印刷の仕方にもこだわりがあり、その手間暇を考えると本当に辞書は重いんだなと実感しました。
それぞれ自分のできる形で辞書に情熱をかける姿
日常生活でも言葉の使い分けに敏感で、まさに辞書に人生をかける馬締ら辞書編集部員たち。
西岡は、馬締たちほど辞書づくりに熱中できず引け目を感じていました。
対外交渉が得意な西岡は、その得意分野で辞書作りに貢献します。
ちょっとチャラチャラして見えた西岡の、辞書編集部への思いが素敵でした。
馬締と違い自分には辞書作りのセンスがないと西岡は考えていますが、馬締は、西岡がもつ自由な発想力こそ辞書作りに必要だと思っていました。
はじめはお互いのことを苦手だと思っていた2人が、尊敬しあえる関係になり、助け合う姿が微笑ましく憧れました。
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