瀬尾まいこ「あと少し、もう少し」読書感想ー中学生駅伝チームの絆

中学駅伝をテーマにした瀬尾まいこさんの小説「あと少し、もう少し」

大会のために結成された駅伝メンバー6人と、陸上未経験の顧問・上原先生が県大会出場を目指します。
それぞれの人間関係と成長が描かれた物語です。

「あと少し、もう少し」は、こんな方におすすめ
・さわやか青春ストーリーが読みたい。
・学生駅伝が好き。
・気持ちをすっきりさせたい。
箱根駅伝熱が覚めない方にもおすすめです。
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1.「あと少し、もう少し」作品紹介

作者は瀬尾まいこさん。

「あと少し、もう少し」は、新潮社より2012年に単行本が、2015年に文庫本が発行されています。

瀬尾まいこさんの著書はほかに「そして、バトンは渡された」「幸福な食卓」などがあります。

【本の構成】
「あと少し、もう少し」は、大会での担当区間順に話し手が変わりながら、物語が進んでいきます。
各区間ごと、大会での様子に、途中で回想が入る構成です。

順番に語り手が変わり、話が進むにつれ、それぞれの内面、考え方、関係性が徐々に見えてきます。
それぞれの関係性を知ったあとの襷の受け渡しは、感慨深いものがありました。

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2.「あと少し、もう少し」の登場人物

桝井
陸上部3年部長。チーム内の雰囲気をよくしようと、周囲に気配りし、メンバーを励ます。陸上経験がなく指導慣れしてない上原先生のことも邪険にせず、さりげなくサポートする。

設楽
陸上部3年。涌井に誘われ、陸上部に加入。大人しく、周りに見下されることがあったが桝井に救われる。顧問が変わり、手を抜く部員がいる中、真面目に練習をこなす。

俊介
陸上部2年。人懐っこく誰にでも積極的に関わっていく。先輩後輩の壁を感じない気安さがある。

大田
授業をさぼりがちな3年。金髪の不良で、小学生のころから問題児とされてきた。桝井、設楽とは同じ小学校。

渡部
吹奏楽部3年。エリートぶって、その場の空気を悪くするようなことを言う。周りに冷たいやつと思われがち。

ジロー
バスケ部3年。お調子者で、その場を明るく盛り上げる力をもっている。頼まれたことをいつも引き受けてしまう。

上原先生
陸上部顧問。もともと顧問をしていた美術部の活動がなくなり陸上部顧問に。陸上の経験はない。

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3.「あと少し、もう少し」の面白さ

このチームは、大会のために結成された数か月の期間限定チーム。だからといって、それぞれの結びつきが弱いわけではありません。
むしろ今まであまり接してこなかったメンバーと深く関わることで、自分と向き合い、新しい発見や成長があります。お互いへの信頼が強くなっていくのがこの本の魅力です。

上原先生は、経験のない陸上部顧問をやることに戸惑っており、頼りないところもありました。
しかし、虚勢を張らず、分からないことは分からないと言える、親しみやすい先生です。
裏表がなく、正直に思っているところを伝えるところも信用できます。
期待されてなかった上原先生が、少しずつ顧問らしくなっていくところもおすすめポイントです。

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4.「あと少し、もう少し」感想

語り手が次から次へと移っていくことで、人物の印象が変わっていくのがこの本の面白さのひとつ。
ちょっと謎だった行動にも意味があったり、周りに興味なさそうな人が、実は周りをよく見ていたりと、本当に人間上辺だけでは分からないことが多いと実感します。
事情を知ると、いかがなものかと思っていた行動すら可愛く見えてしまうのですから、思い込みは怖いものです。

周りの人が自分のことを思っていることを、本人は知らないだけということがある。そこに気がつくことで世界は違って見えます。

駅伝大会のために集められたメンバー。関わりが少なかったゆえの誤解などがありましたが、同じ目標にむかい、お互いを尊敬、信頼していく姿が素敵でした。
駅伝は走るのはひとりだけど、心の中には「あいつのために走る」という仲間がいる。仲間や応援している人に応えようとする強い気持ちに感動しました。

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5.この本もおすすめ(大田くんのその後)

君が夏を走らせる

瀬尾まいこさん著
「あと少し、もう少し」のスピンオフ作品

高校生になった大田君が、一歳の女の子のお世話をすることになったお話。
はじめは泣かれてばかりだった大田君が、一生懸命に女の子を喜ばせる方法を考える姿が素敵です。
少しずつ距離を縮めていく2人に癒されます。

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