「おしまいのデート」は5つのデートのお話が入った短編集です。
デートといっても、カップルの恋愛のデートではなく。
切ないも、悲しいも、温かいも詰まった作品です。
読みやすい短編集をお探しの方におすすめです。
1.おしまいのデート・作品紹介
作者は瀬尾まいこさん。
瀬戸まいこさんの著作はほかに「そして、バトンは渡された」「あと少し、もう少し」など。
「おしまいのデート」は、集英社から2011年に発行され、2014年に文庫化されています。
2.おしまいのデート・5つの短編あらすじ
〇おしまいのデート
中学生の彗子は、毎月第1土曜日に祖父とデートをしていました。
けれどそれも今日が最後になりそうなのでした。
〇ランクアップ丼
三好は、毎月24日の給料日にうどん屋に行きます。
それは高校時代に隣のクラスの担任だった上じいに、玉子丼をごちそうするためでした。
〇ファーストラブ
広田は、特に仲がよかったわけでもないクラスメイト宝田からデートに誘われます。
断り切れず、すっぽかすのもイヤだった広田はしぶしぶデートに行くことに。
〇ドッグシェア
OLの久永は、会社からの帰り道の公園で、ダンボールに入った犬を見つけます。
犬の世話をはじめた久永ですが、犬を気にかけていたのは久永だけではありませんでした。
〇デートまでの道のり
保育士の祥子は、手のかかる園児の幹一とどうやって仲良くなれるかを考えていました。
それには、ただ手がかかるだけではない理由が。
3.おすすめの話と読書感想(ネタバレを含む)
「ファーストラブ」は、高校生の宝田が、今まで特別仲がよかったわけでないクラスメイト広田とデートをする話です。
はじめは宝田が勘違いをしていたこともあり距離があった2人ですが、勘違いも解け、1日の終わりには、またこうして遊びたいと思うほどになります。
しかし次の日学校に行くと、広田が転校をすることを知る宝田。
そこからが何とも言えない切なさです。
1日遊んで仲良くなったとはいえ「友達」という関係なわけではない2人。
友達ならメールするなり、電話するなりすればいいじゃん!となりますが、2人はそこまでの関係ではないのです。
きっと積極的に連絡を取り合ったりすることはないんだろうなと思うと、友達同士の別れとは違う切なさがありました。
「ドッグシェア」は、OLの久永が、公園で見つけた捨て犬の世話をするところからはじまります。
近くの中華料理屋でバイトをしている内村も、その犬の世話をしていて、2人は犬の世話をシェアすることに。
離婚していた久永は、内村と一緒に犬を世話しているうちに、結婚生活での自分の行動を省みます。
自分には相手への思いやりが足りなかったと反省する久永。
こんなふうに、あとになってから気がつくことってありますよね。
こんなふうに登場人物が自身を振りかえる様子から、己を見つめ直せることが瀬尾まいこさんの本には多いんですよね。
この本でも、そのいい機会をもらえました。
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