急に見ず知らずの人が「兄です」と現れたら?
現実にこんなことがあったら、怪しいことこの上ないですが、瀬尾まいこさんが描けば、優しく温かい物語に。
長い話ではないので、気軽に読める本をお探しの方におすすめです。
1.「春、戻る」作品紹介
作者は瀬尾まいこさん。
瀬尾まいこさんの著書はほかに「卵の緒」「そして、バトンは渡された」などがあります。
「春、戻る」は文庫版も発行されています。
2.「春、戻る」あらすじ
望月さくらは結婚を控えた36歳。
ある日、どう見ても自分より年下の青年が兄を名乗って現れます。
2人姉妹のはずのさくらは戸惑いますが、その青年は度々さくらを訪ねて来るようになりました。
さくらの結婚相手の山田哲生は、両親と和菓子屋「春日庵」を営んでいます。
青年はそこにも来るようになり、いつの間にか距離を縮めている青年。
さくらも次第に青年に気を許すようになっていきますが、この青年は何者?
というのが「春、戻る」のストーリーです。
3.感想・おすすめポイント(ネタバレを含む)
明らかに兄ではない人間が「あなたの兄です」なんて言い始めたら怖すぎです。
しかも、結婚予定であることや、住んでる場所まで知っているという。
普通なら、然るべき場所に相談するレベルですが、さすが瀬尾まいこさん、日常で起きたちょっと変わった出来事として、おさまっています。
兄と名乗る青年ですが、人の困惑など気にも留めず、どんどん周りの人と親しくなっていきます。
さくらの結婚相手の山田家にも気に入られ、さくらとも一緒に料理をする仲に。
自分のペースを変えず周りを巻き込んでいくタイプの青年ですが、その人懐っこさから周りとすぐに打ち解けられる羨ましいキャラ。
この青年を受け入れる、山田さんの穏やかさや優しさが魅力的です。
さくらの結婚相手なんだから、青年をもうちょっと警戒しても良さそうですが、「兄です」という青年の主張を「へーそうなんだー」という感じで受け止める寛大さがあります。
さくらの妹のすみれも、青年を受け入れるのが早いです。
青年によると、さくらは青年の妹なのに、すみれは青年の妹ではないという謎設定なのに。
青年となんだかんだ仲良くなっていく、登場人物たちの穏やかな世界に癒されました。
物語の雰囲気にほっこりしつつ、「この男の正体は?」と、不思議が明らかになる楽しみもある本作。
優しい人たちが集まっているお話なので、温かい気持ちになりたいときにおすすめです。
コメント